2015年の統一地方選挙も終を迎えた。
今年の選挙は、既存の選挙制度の問題点や革新への挑戦など、実に様々なチャレンジを見せてくれた。
そんな中から勝手にTOP5を発表したい。
社会的弱者と思われていた人間が、選挙に立候補したことが大きな衝撃を与えた。引きこもりのニートだからこそ、この国の若者を待つ未来に、誰よりも強い不安を抱いていたに違いない。
苦境に立たされる若者の奮起に、期待させられる出来事だった。(千葉市議会議員選挙)
25歳の引きこもりニート上野竜太郎が選挙に出馬
4月12日に投開票が行われた統一地方選挙で、ネット上の人気者となった候補者がいる。千葉市議会議員に立候補したニートの上野竜太郎氏(25)だ。残念ながら落選してしまったが、供託金の没収は回避。ネット上では健闘を讃える声が挙がっている。
上野氏は同市の花見川区選挙区から立候補。無所属で全く後ろ盾がない状況だったが、最終的に1399票を獲得した。15人中12位だったので、定数の10位以内には入らなかったものの善戦した形だ。
「私は今回の選挙で8000円しか使っていません」
ブログによると、上野氏は中学2年生のころから引きこもり状態。自己紹介でもこんな風に書いている。
「私は、ニートです。私は、毎日自分の部屋にこもり一人で過ごしています。私には、友達はいません。知り合いすらいません」 しかし本やニュースで日本の現状を知り、問題意識を持つようになった。ブログでは、若者の貧困や、サービス残業に苦しむサラリーマンなどの社会問題に触れ、「人生に絶望してしまっている人々が未来に希望を持てるような そんな国に、私は暮らしたい」と宣言。
市議会議員に立候補ができる25歳になったのを契機に出馬した。
「ニートの若者候補者」ということで4月上旬からネット上で話題になり、ツイッターのフォロワーも1万3000人を突破。特に注目を集めたのが、なるべくお金をかけないという選挙戦スタイルだ。
選挙ではポスターや選挙カーの費用を公費負担できるが、上野氏は全て自腹で工面。「上野竜太郎 ニート 25才」と書かれただけのシンプルなポスターを自作して、コンビニでコピーした。
選挙カーも使わずに自転車で各地を回り、投開票後の13日にも誇らしげに「私は今回の選挙で8000円しか使っていません」とツイートしていた。
「若い人達が未来に希望の持てるような社会になれば」 そんな上野氏を見守るネット民が心配していたのが供託金の没収だ。一定の票数を獲得しないと、千葉のような政令指定都市の市議会選挙では50万円没収されてしまう。
しかし1399票を獲得したことでこれを無事回避。
ツイッターには「私の様な底辺の人間にとって50万円という供託金はとても大きな金額です。皆さんが私を救って下さったのだという事、生涯忘れません」と支持者への感謝の気持ちを綴った。 また、今回自分が立候補したことで、政治が若者にとって身近なものになることを期待しているという。「若い人達の主張が政策に反映される様な議会になれば、若い人達が未来に希望の持てるような社会になれば、私はとても嬉しいです」
今後については、「平凡な社会人」として社会に貢献していきたいとしている。4月上旬には「よし!選挙終わったら面接行くぞ!」と書いていたので就職を目指すのかも知れない。
当選はできなかったが、上野氏の奮闘ぶりは多くの人に感銘を与えたようで、ネットには
「上野竜太郎さんすげえなあ。同年代&ひきこもりとして素直に尊敬するよ。あんなことできないわ」
「私にまで生きる勇気のようなものを与えてくれた」
「感動をありがとう!」
といった声が出ていた。
キャリコネニュース
障害者に対する新しい道を切り開いたが、同時に既存の公職選挙法や、議会運営の抱える「障害者は想定外」の構造に一石を投じた。
当選は終わりではない、始まりだ。今後本当の苦労が待っているだろうが、最後までやり抜いてくれることを期待したい。(東京都区議会選挙)
「筆談ホステス」斉藤さん当選 音使わぬ選挙戦に法の壁
「筆談ホステス」として話題になった斉藤里恵さん(31)=日本を元気にする会=が、26日投開票の東京都北区議選(定数40)で、初当選した。1歳で聴覚を失い、うまく話せない。選挙運動を細かく規制する公職選挙法が立ちはだかる中、候補者50人中トップの6630票を集めた。
青森県出身で2007年に上京。銀座のクラブでホステスとして働き、筆談での接客が人気を集めて自叙伝も出版された。知人の前区議から誘われ、「障害者の声を政治の世界に届けたい」と立候補した。
斉藤さんは27日未明、同区の選挙事務所で、筆記ボードに「まだ信じられない」と感想を書いた。「バリアフリー社会の実現」に力を注ぐという。
公選法上、区議選では選挙用ビラを配れない。斉藤さんは街頭演説の代わりに、ボードに文章を書いて見せようと考えたが、公選法が禁じる「文書図画の掲示」にあたる可能性があるとして断念。告示後は有権者一人ひとりに名刺を渡してPRしたが、これも違反の恐れがあると警察から指摘され、支援者とともに有権者に声をかけるしかできなかった。
「今の選挙制度は、『音』があることが前提。言語や聴覚の障害者を排除しているのでは」と訴える。
手話は「初心者レベル」で勉強中だ。区議会では、パソコンの音声読み上げソフトを使って質問するなどの方法を考えており、議会側と相談していくという。
思いはただひとつ「民主主義の素晴らしさを知ってほしい!」
残念ながら落選となったが、今後も衰え行く日本の民主主義復活、悪化している日中の架け橋として、大いに活躍してくれることを期待している。(東京都区議会選挙)
中国人の私が帰化して新宿区議選に出る理由
中国出身で2015年2月に日本国籍を取得したばかりの李小牧(り・こまき)さん(54)が、4月26日に投開票が行われる新宿区議選に出馬した。
自身が立候補することで中国国民や日本の若者、そしてアジアの人々に対して、民主主義の大切さを訴えられると話した。「当選すれば中国に大きなインパクトを与えられる。日本のことが好きになる人も増える」と述べた。
1960年湖南省で生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者などを経て1988年に私費留学生として来日。歌舞伎町に魅せられ「歌舞伎町案内人」として活動し始めた。作家や、レストラン『湖南菜館』のプロデューサーとしても活躍している。中国での生活が27年、そして今、日本での生活も27年と、それぞれの国で生活している期間が、ちょうど同じ長さになった。
李さんは2014年3月、日本に帰化することを宣言。帰化を決めた理由は、「日本のパスポートを持てるから」でも、「中国に帰国した際に、外国人なら捕まりにくいから」でもなく、「選挙に立候補できるから」だという。
「日本では誰もが選挙権を持っている。中国では選挙権を持つ人が少ないため、選挙の仕組みすら知らない人が大勢います。政治は中国共産党の一党独裁。繁華街で働く人が選挙に立候補することなど、無理だと思われている。
しかし、日本は違う。日本に来て、私はやりたいことをすべてやってきました。それは、本を出す、新聞を出す、ラジオやテレビなど放送にも出るということ。これらはみんな言論の自由です。民主主義の一つですが、これが中国にいてはできないものです。
日本国民なら誰でも立候補できて、政治に参加できるんです。私が立候補することで、中国と違って日本は民主主義があってすごいと感じる人が増えると思います。より多くの人が日本の民主主義の素晴らしさを知ることになると思います。
中国だけでなくアジア中の、まだ民主主義がない国の人々も、同じように思うでしょう。日本に悪い感情を持っている人も、印象を変えるかもしれません」
李さんは、さらに、日本の若者も選挙に興味をもつようになるのではないかと話した。李さんが出馬するというニュースを受けて、新宿区の大学に通う20代の日本人大学生が、選挙ボランティアをさせてほしいと電話をかけてきたという。
「日本では投票できることは当たり前で、ありがたいものだと思う人は少ないかもしれません。しかし、私が出馬することで、民主主義が存在するということの大切さに気がつく日本人が増えたらと思います」
The Huffington Post
男性候補が「全裸」ポスターを掲示
「法的に問題なし」で選管も対応に苦慮
東京・千代田区議候補者が全裸姿のポスターを掲げて物議をかもした。無所属・新人の後藤輝樹氏(32)で、長髪全裸で短刀を持った右手を高く掲げている。頭の後ろに後光のように菊の紋章があり、あとは陸軍旗風のデザインだ。 裸の肝心のところは候補者の名前で隠している。
ポスターに書かれているのは、本人の名前しかなく、何を訴えたいのかは不明だ。本人はホームページで「選挙への関心を高めるため」と話していたが、得票130票で落選だった。
千代田区民は「ふざけてる」「最低」「おかしいでしょ、どう考えたって」とボロクソで、区役所にも30件ほどの苦情が寄せられた。千代田区選挙管理委員会は「候補者も皆さんからの問い合わせ(苦情)を考えていただきたい」というが、選挙ポスターのルールは大きさ(42センチx30センチ以内)と掲示責任者と印刷社の氏名・住所の明記だけだ。内容については、虚偽事項や利益誘導の禁止以外の規定はない。
ちなみに局部が露出していた場合は『わいせつ物公然陳列罪』に問われる恐れがある。
JCASTニュース
少し前から性的マイノリティーを公表していた政治家はいた。
しかし、芸能人同士の同性婚が発表されるなど、急激に性的マイノリティーの人権問題が脚光を浴びている。
比較的保守的だった日本社会にも明らかな変化が生じてきている証として、ひとまず選出しておきたい。(東京都区議会・名古屋市議選挙)
性的マイノリティー(LGBT)躍進
統一地方選の後半戦となった全国の市議選、区議選には、同性愛や性同一性障害などの性的マイノリティー(LGBT)であることを公表した人も立候補していた。
性同一性障害を公表し、2003年に東京都世田谷区議に初当選した無所属の上川あやさん(47)は、世田谷区議選(定数50)で7132票を獲得し、立候補82人中3位で4期連続当選を果たした。
選挙戦では、同性愛者などの区立学校の対応状況調査や、性的マイノリティーの相談窓口整備などの実績を訴え、前回より得票を上積みした。
同性愛者であることを公表している元東京都豊島区議の石川大我さん(40)も、社民党公認で豊島区議選(定数36)に立候補し、1837票を獲得。候補者55人中20番目で当選した。
豊島区議1期目の途中で辞職し、2014年12月の衆院選で、社民党から比例代表東京ブロックの単独1位候補として立候補したが落選していた。「愛する恋人同士が性別に関係なく祝福される豊島区、多様な人たちがお互いを尊重し合って暮らせる豊島区」の実現を訴え、豊島区議に返り咲いた。
一方、戸籍上は男性ながら、性同一性障害を持ち、女性として名古屋市議選に立候補を届け出た「無所属の会」公認の安間優希さん(45)は、中区選挙区(定数3)から立候補したが、572票で立候補9人中8位となり落選した。
The Huffington Post