サハラの風

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強すぎることは必ずしも良い事ばかりではない?-真の王者の在り方

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「史上最強」「絶対王者」「皇帝」

いつの時代も圧倒的な力を持つ王者への惜しみない拍手と称賛は変わることがない。それはどんな世界でも同じだ。

 

レスリング"

(Photo by Don Le)

 

然しながら強すぎるというのも、それはそれで問題なのかもしれない。そんなことを考えさせられるニュースが届いた。

 

全日本選抜選手権(兼世界選手権代表選考会)

世界選手権(9月、米ラスベガス)代表選考会を兼ねて男女計7階級が行われ、女子53キロ級では五輪3連覇中の吉田沙保里(32)=ALSOK=が3年連続5度目(前身大会を含めると13度目)の優勝を果たし、代表入りを確実にした。同58キロ級では伊調馨(ALSOK)が3年連続5度目の優勝を果たした。

 日本レスリング協会栄和人強化本部長は吉田と伊調について、ともに4連覇を狙う16年リオ五輪後に休養させるプランを明らかにした。次世代の育成が目的で「1年くらい休んでもらって、世界選手権では若手を代表にしたい」とした。それ以降については「東京五輪に出たいというのなら競わせる」と、本人の意向を尊重する。 

ライブドアニュース

五輪と世界選手権を合わせた吉田の世界大会連覇記録が、最長17で止まりそうだ。栄強化本部長がリオ五輪後に「一年間は休みなさい、としたい」と、言い切った。

 「若手に経験を積ませたい」。東京五輪に向けた若手育成のため、国際舞台で吉田が独占してきた枠を空ける方針だ。リオ五輪まで勝ち続ければ、世界V17で途切れることとなる。 

中日スポーツ

 

吉田沙保里伊調馨。オリンピック3連覇を含めたこの2人の驚異的な強さは、今更語ることもないだろう。特に吉田沙保里は凄まじい。「霊長類最強の男」と呼ばれたロシアのレスリング選手、アレクサンドル・カレリンの持つ大記録を更新し、「霊長類最強の女」の称号をほしいままにしている。

 

そんな国民的スターに日本レスリング協会が待ったをかけた形だ。栄強化部長の言い方はソフトだったが、「もういいだろう?」という本音が透けて見える。

国民としては圧倒的な力を持つスターの出現というものは、実に心地よいものだ。しかしその影で

 

伊調が対戦相手の少なさから、「私は人気がない」という趣旨の発言をしていたが、あまりの強さに他の選手が諦めてしまったというのが現実だろう。

それほど長いとは言えないアスリートの現役生活。

吉田は15年近くも王者に君臨し続けている。一度でも王者になるという経験は、アスリートにとって大きな覚醒を生むものだろう。吉田程とまではいかないまでも、才能豊かな選手の多くや、もしかしたら吉田以上の才能を持った選手が、花開く前にリングを降り、或いは挑戦することすら諦めてしまったことだろう。

現に若手の育成に支障が出ており、二人の王者より下の地盤沈下は深刻だと見て、異例の発表をしたのだろうが、あまり長くに渡って絶対王者が君臨し続けるというのは、よい面ばかりではないのかも知れない。

 

何度かリングを降りる選択を選ぼうとした吉田と伊調。まだまだやれると国民の誰もが思っていた中での決断だっただけに、誰もがどうせまだ戻ってくるのだろうとタカをくくっていた。

実際二人は帰ってきたし、日本中が現役続行を歓迎した。

 

だが、真の王者とは自らの引き際や、ひいてはその後の世界のことまで考えるべきものだ。

そうした意味において、平成の大横綱千代の富士の引き際は実に見事だった。「引き際は潔く」と教える角界の指導の賜物だろうが、武士道に通じる日本の伝統的な武道には、こうした要素が色濃く反映されている。

 

近年ではニューヨークヤンキースデレク・ジーターマリアノ・リベラが、まだまだ十分な余力を残しながら、潔く現役を退いた姿が印象的だが、吉田選手と伊調選手には「真の王者」として、彼らに勝るとも劣らない「王者の引き際」を披露してもらいたい。