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サハラの風

世の中の事件や出来事にひっそり・こっそり・ちゃっかり物申す!(フリをする)

「ありがとう・・・」それは魔法の言葉

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人生にとって、とても大切なこと。

 

とある老人ホームに、初対面のご婦人を訪ねたことがある。

 

訳あって重度の認知症である彼女と、半日ご一緒させていただいた。

 

1時間前のことを忘れてしまう彼女が、ひとつだけ常に忘れずに持ち続けていたもの。

 

それは・・・

 

「感謝の心」

 

「ありがとう・・・」それは魔法の言葉

 

人に何かをしてもらった時、例えそれがどんなに些細な事であったとしても、彼女は心から「ありがとう」という、感謝の心を伝えることを忘れない。

 

簡単なようで、なかなか出来るものではない。

 

ましてや彼女はお金を払ってその施設のサービスを受けている、いわば客である。それ故にともすると大きな勘違いをしてしまいそうになる。

 

しかしながらお金を払っているのだから、「やってもらって当たり前」ではない。 スタッフがいてくれるからこそ私がいる。

 

それは当たり前ではなく、とても有難いこと。

 

「有ることが 難しきと書きて 有り難きかな」

 

故にそこには自然と感謝の心が生まれるのだと、 彼女は微笑みながら、 優しく教えてくれた。  

 

お客様は神様・・・

 

最近ふとコンビニでひと言も喋らずに買い物をする自分がいることに、気が付くことがある。

 

こちらはお金を出して買い物をしてやっているお客様なのだから、 わざわざしゃべる必要などない。ましてや言われることはあっても、こちらから「ありがとう」などと言う必要はない。そうおごり高ぶる自分がいる。

 

だがご婦人の考えを拝借し、自分の行動をかんがみるならば、24時間365日、我々のためにいつでも買い物ができるよう、お店を開けて待っていてくれている人達がいる。

 

店員さんをはじめ、それを支える多くの人々の存在があって、 はじめて私達は買い物が出来るのだ。

 

「生活の為」などという身も蓋もない言葉で片付けてしまっては、あまりにもお粗末だ。

 

思い起こせば接客業のバイトをしていた時分、お客様から 「ありがとう」の言葉をひと言かけてもらうだけで、 どんなに嬉しい思いをしただろうか。次回来店された時は、もっと喜んでもらおうと、よりいっそう張り切ったものだ。

 

自分も社会の一員として、サービスを提供する側の人間でもあるのに、なぜかサービスを受ける側である「客」の 立場になると、とたんに感謝の心を忘れてしまう自分。

 

親兄弟や周りの知人、友人、同僚の親切に対して、なかなか恥ずかしくて感謝の心を伝えられなかったり、やってもらうのが当たり前だと思ってしまう自分。

 

人の親切に「当たり前」で片付けて良いものなど、ひとつも無いというのに・・・

 

 

常に感謝の心を忘れないご婦人。

 

何をするにも常に誰かしらのスタッフが、さりげなく手を差し延べる。

 

他のどの入居者の方よりも、スタッフの方々に可愛がられ (良いお年のご婦人にこんな言い方をしたら、 失礼ですね・・・)、気にかけてもらっているのが、半日一緒にいただけの私の目からも明らかだった。

 

それ故だろうか、ご婦人はとても幸せそうで、まぶしいくらいに輝いて見えた。

 

思うに人間ひとりひとりには、それほど大きな違いなどないのかも知れない。

 

もしあるとしたら、それは「自分ひとりでは何も出来ない」という事実に、気が付くか気が付かないかだけのことなのかも知れない。

 

それを知っている人間は、決して感謝の心を忘れない。

 

感謝の言葉はそれだけで周りを幸せにしてくれる。そしてその幸せを何倍にも増幅させて、自分の元へと送り返してくれる魔法の言葉。

 

「ありがとう」

 

改めて声に出してみると、シンプルだけれども、 とても心にしみる素敵な言葉だ。

 

老婦人のように少しずつでも感謝の心を伝えられる、素敵な大人になりたい。

 

暴力の連鎖がこだまするこの世の中にあって「ありがとう」の声が増えたなら、それだけでこの世の中が幸せになる。理屈ではなく気持ちでそれを感じ取ることが出来た。

 

またひとつ人生の大先輩から、大切なことを教えていただいた一日だった。

 

明日はお店で買い物をしたら、店員さんに「ありがとう」と一言言ってみようかな。

 

 

滞在時間を過ぎ、車に乗り込もうとする私。部屋の窓が開き、私に向かって老婦人が叫ぶ。

 

「ありがとう!会えて嬉しかったわ」

 

心のこもった温かい言葉に心が踊る。

 

屈託のない笑顔と、くもりの無い透き通った声が、飛びっきり優しい気持ちを運んで来てくれた。

 

「また来ます!」

 

気が付くと思わずそう叫び返していた。

 

 

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