【何があっても自己責任】ジャーナリストは今日もまた戦場を目指す…

ジャーナリストの自己責任論

2015年1月イスラム国(ISIS)に殺害されたと見られる後藤健二さんが、誘拐保険に加入していなかったことが判明した。

後藤さんは、シリアで拘束される前の昨年10月8日に民放のテレビ番組に出演した際、1日あたり約10万円の掛け金で、英国の会社の保険に入っていると話していた。

後藤さんが殺害されたとみられる映像が公開されたことを受け、警視庁などは、人質強要処罰法違反容疑などで捜査を開始。保険会社に加入状況を確認するとともに、後藤さんの口座を調べるなどした結果、一般的な海外旅行保険にしか加入していなかったことが判明した。

この海外旅行保険は病気や事故などは補償されるが、テロは対象外で、今回の事件でも保険金は支払われていないという。 

読売オンライン

世界には様々なリスクに対する、多種多様な保険がある。そのひとつが誘拐保険だ。

紛争地帯など世界でも非常に危険な地域に赴く時に重宝する保険で、危険地帯に赴くジャーナリストや海外駐在員を置く企業が大勢加入している。

取り扱いは欧州の保険会社15社ほどが行っている。

後藤さんが加入しているとされたものは、誘拐された時の身代金や死亡時の保証に、最大500万ドル程度の保険金が支払われるというものだったが、残念ながら加入した事実は認められなかったようだ。

身重の妻を残し、独断でシリアに乗り込んだ後藤さんが、遺族の為に残した唯一の救いだと信じていただけに、ショックを隠しきれない。

人の命はお金では買えない。どんなに多額の金品をもらったとろとで故人は戻っては来ない。だが綺麗事は抜きにして、生きていくにはお金がいる。やはり莫大なお金というのは、仮初でも遺族の救いとなることもまた事実だ。

『何があっても自己責任』そう言い残して、外務省から渡航禁止命令が出ているシリアに旅立っていった後藤さん。上辺だけの言葉だけでなく、言葉通り出来る限りの保険はかけておいて欲しかった。

そもそも論、後藤さんの言うように、誰にも迷惑をかけずに全て自己責任で完結させることなど出来るはずはない。

イスラムとの関わりも深く『多少名の知れた日本人のジャーナリストなら大丈夫』という奢りはあったのだろうが、反面現実の厳しさを最もよく知る人物のひとりでもあった筈だ。

死人に唾を吐くような行為はしたくはないが、一連の事件で日本政府は元より、各国の関係機関に時間・労力・金銭面で甚大な迷惑をかけてしまったばかりか、少なからず今後の対イスラム国に対する政策面にまで、影響を及ぼしてしまうことは避けられないだろう。

そればかりか、イスラム国は今後日本人に対する更なる攻撃も示唆しており、 海外で働く日本人などに危害が加えられる可能性も、非常に高まったと言わざるを得ない。

必死に国民を守るために危険から遠ざけようとする各国政府と、真実を伝えることが使命と必死にもがくジャーナリスト達。

納得こそ出来ないが、彼らの気持ちは理解出来る。自らの命に変えても苦しむ市民の為に真実を報道したい、或いは仲間を助けたいという彼らの心意気には、心底胸を打たれる。

それでも家族や関係者、時には国民に多大な迷惑や悲しみを与えて良い言い訳にはならない。

弱い者達の目線で捉えた『真実』を報道したいジャーナリストと、自らにとって都合のいい『事実』を報道させたい権力者。

両者の立場が180度異なっているのだから、『文民保護』のジュネーブ条約など、さほど役にたたないのは当たり前のことだ。

政府とジャーナリスト、或いはジャーナリストと戦争の首謀者達の間に渦巻くジレンマか・・・

戦争が生み出す『ノイズ(雑音)』とも言うべき、無用な対立の数々。

至ることろで響き渡るそうしたノイズが、今日も我々の心をひどく憂鬱なものにさせる。

『地球の癌』。我々人類がそんな不名誉な称号を返上できる日は、本当に訪れるのだろうか・・・ふとそんなことを考えずにはいられなくなる。

戦争する人間、そこに行く人間、そしてその人間を殺す人間、更にはその復讐に燃える人間・・・ 何れにせよ人間という存在の悲しさが身にしみる事件だったことは間違いない。

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